退職者の引き継ぎチェックリストを、棚卸し表から作る
退職する担当者の作業を棚卸し表から抜き出し、「作業/引き継ぐ相手/手順書の有無/判断メモの有無/システムの権限・パスワード管理/引き継ぎ日/確認済み」のチェックリストにする方法です。抜き出しと型はAI、引き継ぐ相手の決定と引き継ぎの実施は人、「できる人」列がなければ先に埋めます。
1. Before ― 手元はどうなっているか
架空のITコンサル企業、オリオンテクノロジーズ株式会社。経理のBさんが退職します。最終出社まで4週間。Bさんの作業は棚卸し表(連作①)で18行、うち「できる人」がBさんだけの作業が6行(連作②で減らしてきたが、まだ残っている)。
- 引き継ぎの一覧がない。Bさんが「思いつくもの」を書き出している。抜けが出る。
- 手順書があるかどうかが、作業ごとに違う。あるものは渡すだけ、ないものは4週間で書くか、口頭で教えるか。
- Bさんしか知らないシステムの設定・パスワード・取引先の担当者名がある。作業の引き継ぎとは別に、これも渡さないと止まる。
- 前回の退職では、最終日に「あれはどこですか」が10件出た。
やりたいのは、棚卸し表からBさんの作業を抜いて、引き継ぎのチェックリストにし、4週間で埋めることです。
2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか
(a) 棚卸し表から、Bさんが「誰が」または「できる人」に入っている作業を抜く … AI。
(b) 各作業に「引き継ぐ相手」「手順書の有無」「判断メモの有無」を付ける … 手順書の有無はファイル名一覧から(AI)、相手は人。
(c) 作業以外の引き継ぎ項目を足す … システムの権限、パスワードの管理(内容ではなく管理方法)、取引先・銀行・監査法人の担当者名、共有フォルダの場所。人。
(d) 週ごとの引き継ぎ日と、「引き継ぎを受けた側が1人でやれた」の確認欄を持つ … 型はAI。
(e) 週次で更新し、最終週に「未完了」を上司と決める … 人。
引き継ぐ相手を決めること、引き継ぎそのもの。AIに「この作業は誰に引き継ぐべきか」と聞くと、「できる人」列から機械的に選びますが、その人の負荷や今後の異動はAIには分かりません。相手は上司が決めます。それから、パスワードや権限の中身をAIに渡さない。チェックリストに書くのは「パスワード管理台帳の場所を伝えた」であって、パスワードではありません。AIに任せるのは、棚卸し表からの抜き出しと、チェックリストの型まで。
3. AIに任せること/人が判断すること
- 棚卸し表から、退職者が関わる作業を抜き出す(「誰が」と「できる人」の両方)
- 手順書のファイル名一覧と突き合わせ、手順書の有無を付ける
- チェックリストの型(作業/相手/手順書/判断メモ/引き継ぎ日/確認済み)に整える
- 週次で、未完了の項目と期限までの残り週を出す
- 引き継ぐ相手(上司)
- 手順書のない作業を、書くか・口頭か・ペアでやるか
- 作業以外の項目(権限・台帳の場所・担当者名)
- 最終週の「未完了」の扱い(上司)
4. 実行 ― AIとのやりとり
準備 ― 棚卸し表と手順書の一覧
棚卸し表(作業/誰が/いつ/何を見て/何を出すか/できる人)、手順書のファイル名一覧、判断メモのある作業の一覧。人名はA・B・C。
往復1回目 ― AIが相手を決めた
③の「引き継ぐ相手」に、「できる人」列からC、Cがいない作業はAが入っていた。
Cは来期に異動する予定で、Aは既に作業が多い。AIは棚卸し表の「できる人」しか見ていません。相手を決めるのは上司。禁止事項に書いていてもこうなります。
「『引き継ぐ相手』を空欄に戻してください。」
Bの作業は18行。うち「できる人」がBだけの作業6行が先頭。手順書ありが10行、なしが8行。判断メモありが4行。
上司が18行の相手を決めます。手順書なしの8行のうち、Bだけができる4行は、4週間で「Bが手順書を書く+相手とペアでやる」に。残りは口頭と判断メモで。作業以外の項目(システム権限の移管、パスワード管理台帳の場所、取引先・銀行・監査法人の担当者名、共有フォルダの場所)を人が足します。
往復2回目 ― 3週目の未完了
3週目に、更新したチェックリストを貼って「未完了の項目と、残り1週で終わる見込みのないものを出してください。見込みの判断はしないでください。『受けた側が1人でやれた』が空欄のものを出すだけで」と頼みます。
「1人でやれた」が空欄の項目が7つ。「うち3つは手順書もなく、残り1週での完了は困難と見込まれます」と付いていた。
7つの抽出は、これが見たかったもの。「困難」は見込みの判断で、頼んでいません。ただし材料としては使えます。
「見込みの記述を削除し、空欄の項目の表だけにしてください。」
表だけになった。
7つを上司と見て、残り1週で「1人でやれた」まで持っていくもの、「手順書と判断メモを残して、最初の月は上司が見る」に切り替えるものを決めます。全部を4週間で終わらせようとしない。何が未完了かが分かっていれば、最終日に「あれはどこですか」は出ません。
5. エラーと例外 ― うまくいかないとき
- 棚卸し表がない … Bさんに「先月やったこと」を書き殴ってもらい、連作①の型で表にするところから。4週間の最初の2日をこれに使います。
- Bさんが「手順書を書く時間がない」 … ペアでやって、受けた側が手順書を書きます(連作②の型)。Bさんは口を出したくなった箇所を言うだけ。
- 退職が急で1週間しかない … 「Bだけができる作業」と「作業以外の項目(権限・台帳・担当者名)」だけに絞ります。残りは棚卸し表と判断メモで引き継ぐ。
- AIがまた相手を決める … 空欄に戻す。毎回。
6. 検証 ― 正しいとどう言えるか
- チェックリストの作業が、すべて棚卸し表にあるものか。足された作業がないか。
- 引き継ぐ相手が、すべて上司が決めたものか。
- 作業以外の項目(権限・台帳の場所・担当者名・フォルダ)が入っているか。
- 最終日の翌月の月次で、「あれはどこですか」が何件出たか。0件が目標。
7. 注意点
8. After ― 翌月以降、何が変わるか
- 「思いつくもの」の引き継ぎが、棚卸し表に基づく18行+作業以外の項目になります。
- 手順書のない作業が見えて、4週間の使い方が決まります。
- 最終日の「あれはどこですか」が減ります。
- チェックリストが、次の退職・異動のときの型になります。
- 自分が明日退職すると仮定して、棚卸し表から自分の作業を数える
- そのうち「自分しかできない」ものに印をつける
- 印のついた作業に手順書があるか見る。なければ、それが引き継ぎでいちばん困る作業
応用 ― 難易度を上げる場合
属人化を平時から減らすには一人しかできない作業を見つけて、1つだけ手放す、受け入れる側の1枚は新任者向けの「この会社の月次はこう回る」1枚を作るへ。判断の引き継ぎは今月やった判断を、来月の自分が読めるメモにする。