新任者向けの「この会社の月次はこう回る」1枚を作る
新しく入った経理担当が最初の月次で迷わないように、棚卸し表・締めの鎖・判断メモから「月初〜締め〜報告の流れ/誰が何を出すか/この会社特有の例外/迷ったら誰に聞くか」の1枚をAIに整えさせる方法です。中身はすべて既存の表とメモから、例外と聞く相手は人が書き、AIには一般的な月次を書かせません。
1. Before ― 手元はどうなっているか
架空のIT企業、サンライズソリューションズ株式会社。経理に新しい人が来月入ります。手順書は作業ごとにあります。棚卸し表(連作①)も締めの鎖(連作③)もあります。ただ。
- 「この会社の月次は、全体としてこう回る」を説明する資料がない。手順書は部分で、棚卸し表は70行。最初に読むものがない。
- この会社特有の例外(得意先Xの入金は2回に分かれる、営業2部の検収は月末2日に集中する)が、担当者の頭の中にある。
- 前回入った人は、3か月「誰に聞けばいいか」で止まっていた。
- 教える側も忙しく、口頭で説明して終わる。翌月また聞かれる。
やりたいのは、既にある表とメモから、新任者が最初に読む1枚を作ることです。新しく書くのは、例外と聞く相手だけ。
2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか
1枚に入れるのは4つ。
(a) 月の流れ … 月初/月中/締め日前/締め日/報告。締めの鎖から。
(b) 誰が何を出すか … 棚卸し表の「誰が/何を出すか」を、流れの順に並べ直す。
(c) この会社特有の例外 … 判断メモの「毎月起きている判断」と、担当者の頭の中から。人が書く。
(d) 迷ったら誰に聞くか … 作業の種類ごとに、名前。人が書く。
「一般的な月次決算の流れ」を書かせること。AIに「月次決算の流れを新人向けに」と頼むと、きれいな一般論が出ますが、この会社の例外も、誰に聞くかも入っていません。1枚の中身は、この会社の棚卸し表・鎖・判断メモから。AIに任せるのは、それらを1枚に整えること。例外と聞く相手は、担当者が書きます。それから、手順書の代わりにしない。1枚は「全体像と入口」で、細かい手順は手順書へ。
3. AIに任せること/人が判断すること
- 締めの鎖と棚卸し表から、「月の流れ」と「誰が何を出すか」を流れの順に1枚に整える
- 判断メモの「毎月起きている判断」を、例外の候補として並べる
- 1枚をA4に収める(各項目5行以内)
- 1枚の各項目から、対応する手順書への参照(ファイル名)を付ける
- 例外として載せるもの(担当者の頭の中から)
- 迷ったら誰に聞くか(名前)
- 1枚に載せる粒度(載せすぎない)
- 新任者の最初の1か月で、1枚を直す
4. 実行 ― AIとのやりとり
準備 ― 既にある表とメモ
棚卸し表(作業/誰が/いつ/何を見て/何を出すか)、締めの鎖(作業の順番)、判断メモの「毎月起きている判断」一覧、手順書のファイル名一覧。人名はA・B・C、取引先は記号。
往復1回目 ― AIが「一般的な月次」を足した
「月の流れ」に、棚卸し表にない「予算実績比較」「経営会議資料の作成」「月次レビュー会議」が入っていた。
この会社では、予算実績比較は経営企画がやっていて、経理はやりません。新任者が1枚を信じて「予算実績比較はいつやるんですか」と聞くことになります。禁止事項に書いていてもこうなります(棚卸しのときと同じ失敗)。
「棚卸し表と鎖にない作業をすべて削除してください。削除したものを別に列挙してください。」
この会社の作業だけになった。例外の候補は5つ(得意先Xの入金、営業2部の検収の集中、取込エラーの全角スペース、前受の按分Excel、部長報告の前日締切)。
例外5つを見て、新任者が最初の月に本当に出会うもの3つに絞ります。載せすぎると読まれません。「迷ったら誰に聞くか」を、作業の種類ごとに名前で書きます。
往復2回目 ― 手順書の参照が「あるはず」になっていた
③で「入金消込の手順書:『入金消込手順.xlsx』(推定)」と、ファイル名一覧にない名前が参照されていた。
存在しない手順書を参照させると、新任者が探して見つからず、聞くことになります。一覧にない参照は、手順書がないという事実。
「ファイル名一覧にない参照は『手順書なし』と書いてください。推定しないでください。」
「手順書なし」が3か所。
「手順書なし」3か所は、新任者が入る前に作るか、「口頭で教える」と1枚に書くかを決めます。作れないなら、教える人の名前を書く。1枚は正直に。
5. エラーと例外 ― うまくいかないとき
- 棚卸し表がない … 連作①を先に。1枚は棚卸し表の要約なので、元がないと作れません。
- 1枚に収まらない … 例外を3つに、聞く相手を作業の種類ごとに1人に絞ります。残りは手順書へ。
- 新任者が読んでも分からないと言う … 1枚を新任者と一緒に直します。最初の1か月で直した1枚が、次の新任者向けの版になります。
- AIがまた一般論を足す … 削除して列挙。毎回。
6. 検証 ― 正しいとどう言えるか
- 1枚の作業が、すべて棚卸し表と鎖にあるものか。
- 例外と「誰に聞くか」が、担当者が書いたものか(AIの候補をそのまま載せていないか)。
- 手順書の参照が、すべて実在するファイルか。「手順書なし」が正直に書かれているか。
- 新任者が最初の月次で、「誰に聞けばいいか」で止まらなかったか。
7. 注意点
8. After ― 翌月以降、何が変わるか
- 新任者が、初日に1枚を読んで全体像をつかめます。
- 「誰に聞けばいいか」で止まらなくなります。
- 例外が担当者の頭の中から1枚に出て、教える側の負担が減ります。
- 「手順書なし」が見えて、作るべき手順書が決まります。
- 自分が入ったときに「最初に知りたかったこと」を3つ書く
- それが棚卸し表・鎖・判断メモのどこにあるか探す
- どこにもなければ、それが1枚の「例外」の候補
応用 ― 難易度を上げる場合
元になる表は月次の作業を「誰が・いつ・何を見て・何を出すか」で棚卸しする・月次のどこが詰まっているかを見つける・今月やった判断を、来月の自分が読めるメモにする。退職者側の引き継ぎは退職者の引き継ぎチェックリストを、棚卸し表から作る。