買掛金の残高を、取引先からの残高確認の回答と突き合わせて差異を出す
期末に主要な仕入先へ送った残高確認の回答(相手側の売掛金残高と明細)と、自社の買掛金の残高明細を突き合わせ、片方にしかない請求書と金額の違いをAIに出させる方法です。突合はAI、差異の原因は請求書と検収の記録で人、確認先の選び方と監査上の扱いは監査法人。
1. Before ― 手元はどうなっているか
架空のIT企業、サンライズソリューションズ株式会社。期末に、主要な仕入先10社へ残高確認を送っています(監査法人の手続とは別に、自社でも)。回答が戻ってきましたが、合わない先があります。
- 仕入先Kの回答は 4,820、自社の買掛金は 4,150。差の670が何か、すぐには分からない。
- 回答に明細(請求書番号)が付いている先と、合計だけの先がある。合計だけだと突き合わせようがない。
- 自社の買掛金の明細は、請求書番号ではなく仕訳番号で管理されている。相手の請求書番号と対応づけるのに手間がかかる。
- 差異の原因を「期ズレでしょう」で済ませた年がある。翌期に、計上漏れだったと分かった。
確認先の選び方と監査上の扱いは、監査法人の話。この記事でやるのは、回答と自社の明細を突き合わせ、差異の内訳を出すことです。銀行残高の差異一覧の、買掛金版です。
2. 問題の分解 ― 何を整えれば進むのか
(a) 自社の買掛金の残高明細を、仕入先ごとに請求書番号つきで出す … 仕訳の摘要に請求書番号があれば拾う。なければ請求書の綴りから。
(b) 仕入先の回答の明細を、同じ形にする … 請求書番号/請求日/金額。
(c) 突き合わせて、片方にしかない請求書と、金額の違う請求書を出す … AI。
(d) 差額の合計が、残高の差と一致するかを確かめる … AI。
(e) 各行の原因を、請求書と検収の記録で確かめる … 人。
差異の原因を決めること。AIは「期末日近くの請求書のため期ズレと思われます」と書きますが、自社の検収が済んでいるのに計上していない(計上漏れ)かもしれません。原因は、請求書の到着日と検収の記録を見た人が決めます。それから、確認先の選び方(どの仕入先に送るか)と、差異の監査上の扱いは監査法人と。AIに任せるのは、突き合わせて内訳を出すまで。
3. AIに任せること/人が判断すること
- 自社の明細と仕入先の回答の明細を、請求書番号(なければ日付・金額)で突き合わせる
- 片方にしかない請求書、金額の違う請求書を出す
- 差額の合計と、残高の差を照合する
- 仕入先への確認文の下書き(片方にしかない請求書について)
- 各行の原因(請求書の到着日・検収の記録)
- 計上漏れ・二重計上の修正
- 仕入先への確認と回答の記録
- 確認先の選定と監査上の扱い(監査法人と)
4. 実行 ― AIとのやりとり
準備 ― 自社の明細と回答の明細(1社分)
仕入先Kに対する自社の買掛金明細(請求書番号/請求日/金額)と、Kからの回答の明細。仕入先は記号、金額はそのまま(突き合わせに必要)。
往復1回目 ― AIが原因を書いた
①は「相手のみ 2件(計 850)」「自社のみ 1件(180)」で、②は一致。ただし相手のみの2件に「期末直前の請求のため、自社では翌期計上と思われる」と付いていた。
「翌期計上」は原因の推測です。翌期に計上する予定の請求書なのか、検収が済んでいるのに計上を忘れた請求書なのかは、検収の記録を見ないと分かりません。禁止事項に書いていてもこうなります。
「原因の記述を削除し、①は表だけにしてください。」
表だけになった。
相手のみ2件の請求書を探します。1件は期末日の翌日に届いたもので検収も翌期(期ズレ)、1件は期末前に検収済みなのに計上されていませんでした(計上漏れ)。自社のみの1件は、相手が既に入金済みとして消していた(自社の支払の計上漏れ)。3件とも原因が違いました。
往復2回目 ― 回答が合計だけの仕入先
仕入先Mの回答は合計 2,300 だけで明細がない。自社は 2,100。AIは「明細がないため突き合わせ不可。差額 200」と正直に書き、「自社の明細のうち、200に一致する請求書:#M-118(200)」を候補として示した。
問題ではなく、これが正しい出力です。明細がなければ突き合わせられないと言い、金額の一致する候補を1つ示しただけ。追加の指示は出しません。
仕入先Mに「明細をいただけますか」と頼みます。候補の#M-118が原因かどうかは、明細が来てから。来年から、残高確認の依頼文に「明細つきでご回答ください」と書きます。
5. エラーと例外 ― うまくいかないとき
- 自社の明細に請求書番号がない … 仕訳の摘要に請求書番号を入れる運用にします。今回は、請求書の綴りから番号を拾います。
- 回答が返ってこない … 「未回答」として上司と監査法人に伝えます。催促は提出が遅い相手への依頼の型で。
- 差額の合計が残高の差と合わない … 明細の期間か、消費税の扱い(税込・税抜)が違います。回答の明細の条件を仕入先に確認します。
- AIがまた原因を書く … 削除。毎回。
6. 検証 ― 正しいとどう言えるか
- ①の差額の合計が、残高の差と一致しているか。
- 各行の原因が、請求書と検収の記録で確かめられているか(AIの推測でないか)。
- 計上漏れが見つかった場合、修正と、監査法人への報告をしたか。
- 翌期に「期ズレでしょう」で済ませた差異が、計上漏れだったと分かることが0件か。
7. 注意点
8. After ― 翌月以降、何が変わるか
- 「合わない」が、「相手のみ2件・自社のみ1件、原因はこれ」になります。
- 「期ズレでしょう」で隠れていた計上漏れが、期末に見つかります。
- 残高確認の依頼文が「明細つきで」になり、来年の突き合わせが速くなります。
- 仕訳の摘要に請求書番号が入り、買掛金の管理が請求書単位になります。
- 残高確認の回答のうち、合わなかった先を1社選ぶ
- 自社の明細と回答の明細を並べ、片方にしかない請求書を探す
- 1件について、請求書の到着日と検収日を見る。期末の前か後か
応用 ― 難易度を上げる場合
銀行残高の差異は銀行残高と帳簿が合わないとき、差異の一覧を作る、親子間の残高は親子間の差異を「期ズレ・計上漏れ・金額違い・相手違い」に分けて、どちらが直すかを決めると同じ型です。支払前の請求書の確認は請求書の条件が契約書・発注書と違う箇所を、支払前に洗い出す。